脂質異常症って何が良くないんだろう?
こんにちは、遊輔です。
今回は脂質異常症と診断された場合、それが何のリスクを示していて、何を伝えてくれているのかということについて考えていきたいと思います。
診断について何を示しているのかについて理解を深めることは、重症疾患のリスクを避けるための予防行動につなげることができます。
ぜひ一緒に勉強していきましょう。
脂質異常症の診断が示すリスクとは
では早速結論から話すと、脂質異常症はなんのリスクを示す指標かというと、動脈硬化性疾患のリスクを示す指標だと言えます。
それは単にネットで調べるとすぐに出てくる、「脂質異常症はプラーク(脂肪の塊)を作って動脈硬や心筋梗塞や脳梗塞になりやすい」などの端的な話を元にしているのではなく、
脂質異常症と診断され治療方針やそのためのアドバイスを受けるまでの流れを読み取ることでわかります。
別に診断の流れを覚えて欲しいわけではなくて、脂質異常症という診断があなたに伝えてくれているメッセージを汲み取れるようになって欲しいということです。
どういうことか詳しく説明していきますね。
脂質異常症の診断基準の意味
まず脂質異常症が何を持って診断されているのかというと、血液検査項目であるトリグリセリド(TG)、HDLコレステロール、LDLコレステロール、non-HDLコレステロール値のいずれか1つでも診断基準の値に達している場合に診断されます。
では基準値から逸脱していることが何を示しているのかというと、統計的に冠動脈疾患(狭心症や心筋梗塞)や脳梗塞などの動脈硬化性疾患リスクが高くなることを示してくれています。
そして動脈硬化性疾患リスクは、そのほかのリスク要因(糖尿病や高血圧、心疾患の既往など)が重複するほど高まっていくということもわかってきています。
そのため、脂質異常症の診断基準に該当した場合、その他のリスク要因の有無も確認していき、その上でどのくらい動脈硬化性疾患リスクが高いかを判断していきます。
つまり、脂質異常症の診断基準は診断すること自体が目的ではなく、動脈硬化性疾患にどれくらいなりやすい状態なのかを判断するための過程の1つであるということです。そうして、具体的にどのような方針で治療を行っていくかを決めていくことになります。
冠動脈疾患リスクを示す4つのカテゴリー
心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患リスクがどのくらい高いのかについては、一次予防か二次予防かを鑑別し、さらに一次予防ではリスク別に3つに分類されていきます。
《一次予防グループ》
=まず生活習慣の改善を行なった後薬物療法を考慮していく方針
10年間の冠動脈疾患発症率について
1 低リスク:2%未満
2 中リスク:2%以上 9%未満
3 高リスク:9%以上
どうするとリスクが高くなるのかというと、
・年齢を重ねるほど
・女性よりも男性
・高血圧(正常血圧 < Ⅰ度高血圧 < Ⅱ度高血圧)
・HDLが低くLDLが高い
・高血糖(耐糖能異常あり)
・早発性冠動脈疾患の家族歴がある など。
年齢や性別、家族歴はどうにもなりませんが、その他の部分でリスクを下げることができるというわけですから、自分に当てはまるところから対策を考えていきたいところです。
《二次予防グループ》
=生活習慣の是正とともに薬物治療を考慮していく
4 冠動脈疾患の既往
今までに冠動脈疾患を発症したことがある場合、再発するリスクが他の人よりも高いことが報告されています。
さらに、二次予防において
・家族性高コレステロール血症
・急性冠症候群
・糖尿病
・喫煙
・慢性腎臓病
・末梢動脈疾患
・脳血管障害
・メタボリックシンドローム
などに当てはまる場合、より厳格な管理が必要とされています。
よくわからないかもしれませんが、慢性腎臓病や末梢動脈疾患などは喫煙や高血糖、高血圧、肥満などが元になって起きている可能性が高いです。
一次予防においても二次予防においても、重症化疾患の根本原因になりえる高血糖、高血圧、肥満などを改善していくことが重要であるということがわかります。
診断や治療方針から汲み取ってほしいメッセージ
少し難しい話をしてしまったかもしれませんが、治療方針などを決める流れを知ることで何を汲み取って欲しいのかというと、
・脂質異常症と診断されている時点で、将来的に他の人よりも重症化疾患リスクが高くなっているかもしれないということ
・薬が処方されていなければ、生活習慣の改善によって検査結果や健康状態が改善されることを期待されていること
薬を処方されていれば
・「薬で一時的に疾患リスクを抑えているから今のうちに生活習慣を改善してください」ということ
薬を始めれば検査結果が改善されて、ホッとしてしまうかもしれませんが、根本的な原因を解決できているわけではないということは肝に銘じておいたほうがいいかと。
そして、改善していくべき目標は脂質異常症に該当する検査項目だけではなく、脂質異常症を引き起こしている習慣やリスク要因にも目を向けて、動脈硬化性疾患が起きないように、全体を俯瞰して取り組んでいくことが重要だといえます。
改めて、もしこれを読んでいるあなたが脂質異常症と診断されていたら今どんな治療をしていて、そこにはどんな意味や意図を読み取ることができるのか振り返ってみて欲しいです。
そして今何を目的に療養しているのかを改めて考えてみて、これからの療養生活をより納得して意図を持って取り組んでいってもらえたらと思います。
予防をしていきたいという人であれば、脂質異常症はどのようにするとなるのかについて理解を深めると、自分にあった対策や行動が見えてきやすくなります。
というわけで次回からは
「どうすると脂質異常症になるのか」という視点から対策などについても考えていこうと思います。
それでは!
参考文献:
https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_3_230210.pdf